初出：コロコロコミックNo.40（1981年8月号）
収録：太田出版復刻版第2巻
ついに一平太が主役の座についた！作者へのお中元に、好物のあんみつを大量に送ったからだ。今回はあらしは脇役。江戸時代を舞台にした特別編の始まり始まり。
「いやっほ〜〜っ！！」
江戸城では将軍・さとるが、お座敷パックマンを楽しげにプレイしていた。沢田研之進と名乗る男からの献呈品である。
「おもしろいぞ、この「白万」は、沢田研之進よ。」
「将軍さまのありがたいおことば。研ちゃんしあわせ。」
しかし突然、画面の中の妖怪がドクロになって飛び出してきた。将軍は苦しみ出す。
「エロイムエッサイム、古きムクロをすてヘビはここによみがえるべし」
傍らで奇妙な呪文をつぶやく研之進。苦悶の表情を浮かべて将軍は倒れた。研之進は不気味に笑う。
場面は変わって町外れ。魚を奪って逃げるネズミを、子どもが棒で打ちすえている。そこへ侍が現われ、子どもに刀を突き付けた。
「ネズミ ゴキブリ ハエハエカカカ、生き物を殺した者は死刑だ！」
天下の悪法、生類憐れみの令の再来である。今日になっていきなり将軍様が決めたのだという。
「待てえっ！」
子どもを追う侍に、インベーダー手裏剣がヒットした。同心・一平太と、その子分の岡っ引き・あらしの登場である。
「頭のいい将軍さまが、メチャクチャな命令を出すはずがねえ。将軍さまになにかあったんだ。行くぞあらし！…くそ、セリフが長いぜ」
台本を見ながら一平太親分が言う。隠密同心に変身して、江戸城に潜入だ！
「グフヒヒ、はびこれハエハエカカカ、ゴキブリ イエダニ ドブネズミ」
将軍の企みは、江戸に伝染病を流行らせることだった。あんなに聰明だった将軍さまが一体なぜ…？
「正体を見せろニセ将軍！」
天井裏から現われた一平太は、ひと目で将軍が偽物だと見破った。
「本物の将軍さまは三段リーゼント！おまえの頭は四段じゃないか！」
将軍は沢田研之進の変装だったのだ。研之進は一平太をも妖術にかけようとするが、インベーダー手裏剣で阻まれる。
「いてえじゃねーか、近よるとこのゲームをこわすぞ！」
なんと本物の将軍さまがゲームマシンの中にいる。百万点出さない限り外には出られないのだという。
「ぬおおお、やったるわい！くらえ、必殺炎のコマ！」
一平太親分の華麗な必殺技が炸裂するが、火事になっては危ないとあらしがすかさず消火器で消し止めた。まあ当時は完全木造建築だからなあ…。
「ぐぐぐ、見よコロコロ百万読者諸君。エレクトリックサンダーっ！…げっ。」
せっかく大技を繰り出したのに、背景はどういうわけかゴキブリ・便器・ウンコ・トイレットペーパー・アキカン・リンゴの芯・バナナの皮・すがやみつるなどが描いてあってメチャクチャだ。
「な、なんでおれのバックはこんななんだ？もっとカッコよくきめろ！」
作者に訴える一平太だったが、「アンミツが足りない」と相手にしてもらえない。
「ふははは。おいらの出番がきたぜー。真空ハリケーン撃ちい〜〜っ。」
それに対してあらしのバックは満開の花びらで光り輝いている。妖怪モンスターは全滅し、さとる将軍は助かった。一平太の野望は花と散ったのだ。
トップ > ゲームセンターあらし > 作品リスト > 花の一平太