初出：コロコロコミックNo.28（1980年8月号）
収録：てんとう虫コミックス第4巻／小学館コロコロ文庫第2巻／太田出版復刻版第1巻
塾の居残り特訓で遅くなり夜道を一人歩くさとるの前に、突然ドラキュラの格好をした男が現れた。自らを現代のドラキュラと称する男はさとるにゲーム勝負を挑む。「このドラキュラハンターで、十万点出したら帰してやる」さとるは受けて立つが、その直後彼の絶叫が付近にこだました。
翌日あらしと一平太は、つるつるに剃りあげられたさとるの頭を見て驚く。ドラキュラはこのところ夜になると現れて、通行人にゲーム勝負をふっかけては負けた者の一番大事なものを奪っていくというのだ。自慢の三段リーゼントを失い、悲しむさとる。
「グス。女の子のファンがへるなあ…。」
その話を聞いた一平太は「おれがかたきをとってやるぜ！」といきまく。夜になり人気のない路地をうろつく彼の前に、ドラキュラは姿を現した。昼間ゲームセンターでたっぷりドラキュラハンターの練習をしてきた一平太は、余裕で面を進めていく。
「今回はあらしの出番はないぜ。主役はおれだ〜〜〜っ。」
しかし７面ごとに現れるコウモリの群れに立ち向かった時、突然最後の一匹が宙返りをして、一平太はついにやられてしまう。
翌朝、気絶し棺桶に入れられている一平太をあらしは発見する。一平太は腹巻きを奪われており、棺桶の蓋には「あらしへ、今夜十二時外人墓地にて待つ」との手紙が。そこへ、「大逆転！水中必殺技」で戦ったミッキーがとんでくる。女子サーフィンチャンピオンのサミーが、ドラキュラにさらわれたというのだ。ドラキュラは人質をとってでもあらしと勝負するつもりだ。
夜になり墓地へと赴いたあらしの前にドラキュラは姿を現す。ドラキュラはあらしとの勝負のために、特別製のドラキュラハンターを用意してきた。眠れる美女を守る十字架がひとつ破壊されるたびに、捕らわれたサミーに巨大な刃が１センチずつ近づく仕組みだ。
「くそ〜〜っ、そんなことさせてたまるか。勝負だ、ドラキュラ〜〜〜っ！！」
「こい！あらし。ただし、わしが勝ったらそのインベーダーキャップをもらうぞ！」
「なにっ！？これはテレビゲームチャンピオンのしるし！そうかんたんにわたしてたまるかっ！！」
ゲームがスタートすると、一面目からいきなり吸血コウモリが攻めてきた。しかも宙返りしながら攻撃をしかけてくる。応戦するあらしだったが、コウモリは十字架ブーメランの届かないギリギリのところを飛んで撹乱し、その隙にほかのコウモリが美女を守る十字架を削り取ってゆく。このコウモリはドラキュラが自分で操縦しているのだ。その巧みなコントロールにあらしは翻弄され、逃げ回るのが精いっぱいである。
「ふひひひ、あらしのインベーダーキャップにくらべれば、いままで集めたコレクションは、クズも同然だ。」
そこへさとると一平太が駆けつける。応援に来てくれたのかと思いきや、一平太の第一声は「あらし〜〜っ。負けちまえ〜〜っ」。
「このままいけば、サミーちゃんのヌードが見られる！チャンスだぜ。さとるだって見たいよなあ？」
本音を言えば自分も見たいさとるであったが、これ以上女の子のファンが減ることを恐れた彼は、ドラキュラの苦手なニンニクをあらしに渡して加勢する。その臭いにたまらずコントロールを乱すドラキュラ。
「くらえ〜〜っ、月面宙返りプラス炎のコマ〜〜っ！」
しかしブーメランはまたもやコウモリにかわされる。万全の体勢で勝負に挑んだドラキュラが、臭い消しのためのキムコを用意してあったのだ。タイミングを狂わされ、頭から地面に落ちるあらし。そして刃はついにサミーの服を切り裂き始める。
「ギヒヒヒ。インベーダーキャップは、わしのものだ〜〜っ！！」
「うう、サミーちゃんをはだかにさせやしない。このインベーダーキャップもわたしはしない。」よろけながらもゆっくりと立ち上がるあらし。「おれは…おれは、ゲームセンターあらしだあっ！」
あらしは大きく振りかざした両腕を十字に組む。
「くらえ〜〜っ、月面宙返り十字架撃ち〜〜〜〜っ！！」絶えまなく発射されるブーメランの飛跡が、牧師を中心とした十字架となった！
あらしの必殺技の前に吸血コウモリはたちまち全滅してしまう。次いでドラキュラの舘も破壊された。勢いあまった刃はコントロールをはずれ、ドラキュラの顔面を直撃する。「ぎゃああ〜〜っ」しかしその下に現れたのは…。
「な、なんだ、お面だったのか…。」ぽかんとするあらし。ドラキュラの正体はただの子どもだったのだ。
「グヒーン、どうしてもインベーダーキャップがほしかったんだよお。」と泣く少年。「コロコロのけんしょうにおうぼすればよかったのに…」と一平太はつぶやいた。
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