初出：コロコロコミックNo.25（1980年5月号）
収録：てんとう虫コミックス第2巻／小学館コロコロ文庫第2巻／太田出版復刻版第1巻
凶悪なエイリアンの集団に追いかけられ、挙げ句落とし穴に落とされる夢を見たあらし。目覚めた彼は、自分がブルートレインに乗っていることを思い出す。ゲームを楽しむためのミステリー列車「ゲームセンターあらし号」に、一日車掌長として招かれていたのだ。
起きたあらしは車掌の業務をこなした後、コーチ役として呼ばれていた一平太やさとると共に、乗客の子どもたちにゲームの手ほどきを始める。が突然、列車は本線をはずれ、路線図にも載っていない線路へと進路を変えた。到着したのは、崖にはさまれた行き止まり。そして列車の目の前には、巨大な平安京エイリアンのスクリーンがそびえ立っていた。
驚くあらし達の前に、「地獄谷のエイリアン軍団」と名乗る覆面の男たちが現れる。崖崩れをおこし列車が後戻りできないようにした彼らは、さらに列車を埋めてしまうだけの爆薬がしかけられていることを明らかにする。目の前の平安京エイリアンで二十分以内に十万点を出さない限り、このまま乗客を生き埋めにしてしまうというのだ。あらしはやむなく挑戦を受けるが、さらにエイリアン軍団は、重い鎧を身につけてゲームをプレイすることを要求してきた。あらしの月面宙返りを封じようという作戦である。
平安京エイリアンは初めてというあらしに不安を隠せないさとる。あらしが今まで挑戦してきたゲームとは違い、平安京エイリアンでは反射神経だけでなく頭脳プレイが要求されるからだ。東大の学生が開発したゲームと聞いた一平太は、「あのあらしの頭で、東大生に勝てるわけがねえ」とすっかり諦め顔だ。
いよいよゲームを始め、次々と穴を掘ってはエイリアンを埋めていくあらし。何とか一面をクリアし、二面目でもまた穴に落ちたエイリアンの元へ駆け寄る。が、落ちた場所が遠すぎた。エイリアンは今にも這い出そうとしている。
「だめだ、間に合わない！」
「ところがどっこい！」
あらしはエイリアンの落ちた穴の手前に新しい穴を掘ってそのピンチを脱する。それは「伊藤掘り」と呼ばれる必殺テクニックだった。鍛え研ぎ澄まされたゲームの勘が、知らず知らずのうちにあらしに必殺技を使わせたのだ。ブルトレを守る使命感に燃えるあらしは、次々にエイリアンを撃破していく。
残り時間はあと五分。十万点まであと二千点とせまったあらしは、重い鎧に疲れた体を休ませようと、通路の両側に穴を掘ってしばしの休憩に入る。しかしそれが甘かった。平安京エイリアンでは面クリアにある一定時間以上かかると、残ったエイリアンが増殖して凄まじいスピードで動き出すのだ。この事態は通常ゲームオーバーを意味する。あっという間に三人の検非違使を失い、途方に暮れるあらしだったが、その時さとるが最後の手段をひらめいた。
「ひとつだけある。あらし君にだけできる必殺技が！」
「そうかっ！ギャラクシーウォーズやギャラクシアンに使えて、平安京エイリアンに炎のコマが使えないはずがないっ！」
ワープする検非違使を見て驚くエイリアン軍団。あらしは倒せないはずのエイリアンを次々と埋めていく。
「うおおおお〜〜〜っ！こんなヨロイがなんだあ〜っ！」
あらしはついに鎧を着たままジャンプし始める。その猛攻に、ついにエイリアンは全滅した。「どうだ、見たかっ！」
「君の勝ちだ、あらし君！」
エイリアン軍団は覆面をとって素顔を見せる。なんとその正体は、平安京エイリアンを開発した東大生だった。実は爆弾は偽物、すべては「あらし号」ツアーを盛り上げるためのイベントだったのだ。勝利したあらしを讃え、終着駅へと案内するエイリアン軍団。こうしてあらし号は、夢の遊園地「ゲームランド」に到着したのだった。
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