初出：コロコロコミックNo.23（1980年3月号）
収録：てんとう虫コミックス第2巻／小学館コロコロ文庫第1巻／太田出版復刻版第1巻
突然、あらしの前に黒服に身を包んだ二人の男が現れた。拳銃をつきつけてあらしを連れ去ろうとしたのを見た一平太はそれを止めようとするが殴られ昏倒してしまう。あらしも睡眠薬で眠らされ二人は車に乗せられた。
二人が気づいたのは、人里離れたほら穴の中だった。そこには巨大なギャラクシアンのスクリーンと、複雑な機械の前に立つ「総統ギャラクシアン」と名乗る妙なお面をかぶったおっさんが待っていた。彼が部下に命じ、ゲームで対決するためにあらしをさらわせたのだ。
「いつかそのテレビゲーム日本一の鼻をへしおってやろうと、日夜、腕をみがいておったのじゃ！」
「しゃらくせえっ！やったろうじゃねえかあっ！」
しかしこのギャラクシアンは普通のものとは違っていた。なんと、キーボードの操作でエイリアンの動きを自由に操れるようになっているのである。あらしは一瞬たじろぐが、すぐに「人間の方が倒しがいがあるぜ！」とかえって闘志を燃やす。
ゲームが始まり襲ってくるエイリアンを一機残らず撃ち落とすあらし。しかし総統ギャラクシアンは、負けじと残機をバラバラに降下させる。これは助からないかと思われたが、あらしは必殺技・炎のコマを繰り出して応戦した。姿を消す砲台に驚く総統ギャラクシアン。「消えてはいない！あまりの動きの速さに見えないだけ！しかし！！おれの目に見えているんだ〜〜っ！」まず一面目はあらしの勝利である。
「まだ二面めがあるぞ！もっと恐ろしい二面めが！」という総統ギャラクシアンに対して、「へん！みんな撃墜してやらあ！」と威勢をあげるあらしだったが、そこで黒服の男達が縛りあげた一平太に拳銃をつきつけた。「二面めでも勝ってみろ！一平太の命はないぞ！」総統ギャラクシアンはそれに気づかず、二面目をスタートさせる。
「必殺アメアラシ！」二面目ではエイリアンの大群が画面いっぱいに広がって攻撃してきた。これでは炎のコマを使ってワープしても逃げ場がない。たちまちやられるあらしのビーム砲。後ろでは黒服たちが「ヒヒヒ、その調子！」とほくそ笑む。「そ〜りゃそりゃそりゃ〜〜〜っ！二機めもいただきだ〜〜っ！」一平太が人質にとられているとは知らない総統ギャラクシアンは、容赦なく攻めたてる。あらしは手も足も出ない。
「おれが殺されるんなら、命にかえても勝ってやるのに…。一平太が殺されるんじゃ、勝つわけにゃいかねえ……。」
「お、おれのために……。ゲームのためなら命さえかけるあらしが……、おれのために……。負ける気だ！」
歯を食いしばって屈辱に耐えるあらしを見て、一平太は命を捨てる覚悟を決める。「あらしっ、おれは死んでもいいっ。勝て〜〜っ。」「だまれ！」と押しつけられた拳銃を、一平太は逆に口にくわえこんだ。その姿にうたれたあらしは、一平太の覚悟に報いるため力の限りをつくす。コントロールパネル上に逆立ちし、そのまま水魚のポーズだ。「精神統一すれば、エイリアンの動きも見きわめられる！…見たっ！」あらしは空中高くジャンプした。自身を落下させることで、降下するエイリアンの動きを相殺しようというのだ。空中回転から連続してエイリアンへの一斉攻撃…炎のコマプラス月面宙返り、二大必殺技の合体だ。エイリアンは一瞬にして全滅した。
怒って一平太を殺そうとする黒服たちだが、危ういところで総統ギャラクシアンがそれに気づく。
「おまえたちなんてことを！わしは、正々堂々と勝負しようと思っとったのに！」
逆境に耐えぬき勝利したあらしに敬意を表し、彼は覆面を脱いで素顔を見せる。それはあらしや一平太もよく知っている顔だった。
「ああ〜っ、あなたは！日本一えらい人！」
「アーウー。ゆるしてくれ。わしは立場上テレビゲームが趣味ということはないしょなんじゃ。」
おみやげの電子ゲームをもらった二人は、いじめてくれたお返しと、黒服たちに籠を担がせ帰途へとつくのだった。
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