初出：コロコロコミックNo.21（1980年1月号）
収録：てんとう虫コミックス第2巻／小学館コロコロ文庫第1巻／太田出版復刻版第1巻
正月、初詣にでかけるあらしと一平太。願い事はもちろん「今年もゲームの点がたくさんとれますように！」。もらったお年玉もあることだし、遊んでいこうとする二人はゲームセンターの出店を見つけて大喜び。客寄せのため、一万点出せば自転車がもらえるという売り文句に惹かれて早速挑戦する二人。ゲームはギャラクシーウォーズだ。
はじめは楽勝だと思っていた二人だったが、プレイを始めてみて驚く。一面目から隕石の数が尋常ではないのだ。しかも、本来ならUFOしか落さないはずの放射能を隕石までが落としてくるのである。必死でかわしようやく一面クリアしたものの、得点は屈辱的な最低の400点。続く二面では隕石の数はさらに増え、とうていUFOまでたどり着くことができない。苦戦する二人を、陰で見つめる者がいた。大文字さとるである。
険しい顔でゲーム画面を見つめていたさとるは、二人の前に姿を現して言う。「今パターンを読んでみたが、二面からは絶対にUFOを落とせない！ミサイルをどこに移動させても隕石が必ずゆく手を塞ぐっ！」つまりゲーム屋が客からふんだくるために作った、改造インチキマシンだったのである。インチキを暴かれたゲーム屋は「いいがかりつける気か？」と三人をボコボコにのしてしまう。やられた悔しさに、こうなったら何がなんでも一万点出してやろうと燃えるあらしだったが、さとるはコンピューターがついてこれないような速さで手を動かしでもしない限り無理だと言う。策につまり駆け出したあらしは、曲芸独楽を見せる大道芸人を見て何かをひらめいた。
あらしの考えは、独楽を回転させる特訓で手のスピードを上げようというものだった。猛特訓で手の皮は裂けてしまうが、あらしは構わず独楽を回し続ける。その甲斐あって独楽のスピードはどんどんあがり、とうとう軸と地面との摩擦で火を吹き始めた。必殺・炎のコマの誕生である。
翌日、再挑戦するあらしの顔は、心配げなさとるや一平太とは逆に自信に満ちていた。一面目は小手調べと言い放つあらしは、昨日とは桁違いの手さばきで確実に得点を重ねていく。一面終了時点の得点は、ベストの1650点だ。そして問題の二面目…「手が！手が消えた」あまりの動きの速さに、あらしの左手が見えなくなったのだ。自機の動きは目にもとまらないものとなり、隕石の放射能はそのぼんやりとした像を素通りしてしまう。信じられない光景に言葉を失うさとると一平太。あらしは三面をクリアし、自転車獲得まであと500点とせまる。
しかし四面目では隕石群の密度は更に増し、ほとんど壁と化した。「こ、これじゃもう無理だ〜〜っ！」さとると一平太は言うが、あらしは諦めない。ひたすら凄まじいスピードで手を動かすのみだ。ブスブスッ…。その時、何かが燃えるような音とともに、焦げ臭い匂いがあたりに漂い始めた。あらしの手がレバーとの摩擦で焼け始めたのだ。やがて操作するミサイルは、ついにその姿を完全に消した。あらしの手の動きが、とうとうコンピューターに勝ったのである。見えないミサイルを、鍛えたゲーム勘で見事に操るあらし。そしてとどめの一撃、その手は炎に包まれたのだった。店員は自転車を持って逃げてしまうが、焼けた手をバケツの水に突っ込みながらあらしは言う。「へん、自転車なんかいらねえや！この手がおれの勲章だっ！」
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