初出：コロコロコミックNo.17（1979年9月号）
収録：てんとう虫小ミックス第1巻／小学館コロコロ文庫第1巻／太田出版復刻版第1巻
マイコンショップでゲームにいそしむあらしの前に一人の美女が現れた。彼女は最新鋭のゲームをやらせようと言ってあらしをコンピューター開発センターへといざなう。ほいほいついていくあらしだったが、そこには一平太とさとるが待っていた。コンピューターの権威、納戸博士と安藤助手、そしてあらしを迎えに行った能登プログラマーを紹介するさとる。早くゲームをやらせろというあらしと一平太に、彼は挑戦を宣言する。さとるは、開発センターの誇るビッグコンピューター“マンモス”の性能を生かし、あらしを倒すためのゲームを開発していたのだ。その名は「海賊インベーダー・パイレーツ」。立体ホログラフィーを用いたシューティングゲームだ。さとる三度目の挑戦である。
順番を決めるジャンケンで勝った一平太が、まずは挑戦を開始する。しかしやがてゲームルームから彼の絶叫がこだました。出てきた一平太は「あいつに気をつけろ」という言葉を残して気絶してしまう。「一平太ほどのやつが気絶するとは…。な、なんだあいつってのは……？」いぶかしむあらしだがそのままシートにつく。
ゲームが始まり、現れた海賊インベーダーを次々と撃ち落とす彼を、コントロールルームではさとる達がモニターしていた。普通の人間の倍以上に敏感な瞳孔反応を見て、驚く安藤助手と納戸博士。さとるは言う。「ゲームに対する反射神経の良さの秘密はそれか！しかし、これは普通のテレビゲームとは違うっ！」
その時、あらしの前に謎のゴーストが現れた。応戦するも時すでに遅く、急速に広がるゴーストはたちまちあらしの座る砲台を包みこんでしまう。これが一平太の言っていた「あいつ」、宇宙船幽霊“スペース・ゴースト”だった。最初の一機を失ったあらしを見て勝ち誇るさとると納戸博士。さすがのあらしも対抗策を思いつかず、二機目のプレイが始まるまでの休憩時間に、やけになって床に寝転がってしまう。しかし何気なく体をほぐす彼を見た能登プログラマーは、その姿勢がヨガの秘法“水魚のポーズ”になっている事に気付く。期せずして、神秘の歴史を持つヨガと現代科学の最先端であるビッグコンピューターの勝負が始まったのだ。
プレイを再開したあらしは、何故かホログラフィーでできた敵の気配を感じとれている自分に気がつく。しかも敵の動きが妙に遅く感じるのだ。これなら楽々とインベーダーを撃ち落とすことができる。がその時、あらしの背筋に冷たいものが走った。先程のスペースゴーストである。まだ現れてすらいない敵までも感じとった彼は、突如砲台のカバーを突き破り月面宙返りを決行する。スペースゴーストが現れる瞬間を狙い撃とうというのだ。「そこだあ〜〜っ！！」
さしもの船幽霊も、広がりきる前を撃たれては一巻の終わりだった。粉々になるゴーストを見て、涙を流して悔しがるさとる。「船幽霊がいつ現れるかは僕でさえわからないのに！あらし君は化けものだ〜〜っ！」あらしのあまりの早技についていけず、“マンモス”はついにオーバーヒートしてしまう。心の目で敵を見るヨガの秘法に、ビッグコンピューターは敗れたのである。当のあらしは、実はヨガとは何かすら知らなかった。無意識の勝利であった。
トップ > ゲームセンターあらし > 作品リスト > ビッグコンピューターをやっつけろ！