初出：コロコロコミックNo.16（1979年8月号）
収録：てんとう虫コミックス第1巻／小学館コロコロ文庫第1巻／太田出版復刻版第1巻
親指逆立ち、なわとびなどの準備運動を終え、今日もゲームセンターへと向かうあらし。が、たどり着いた行きつけの店「シリウス」の入口には「小中学生入場おことわり」の貼り紙があった。マネージャーは、インチキコインを使ったり、賭け事をしたりなどの悪さをする子が増えているためと説明する。
うなだれて帰るあらしは、友人が中学生数人からゲームセンターで遊ぶ金をせびられているシーンを目撃する。「おまえらのようなのがいるから、おれたちまでゲームができなくなっちまうんだ！」怒ったあらしは食ってかかるが、そのうちの一人、月影一平太と名乗る中学生にこてんぱんにやられてしまう。失意のうちに帰宅した彼のもとに、全日本インベーダー選手権の招待状が届いていた。出場者のリストに一平太の名前があるのを見て驚いたあらしは、「けんかならかなわないが、インベーダーなら負けやしないぞ！」とある決意を抱く。
インベーダー選手権は、東京湾上のマンモスタンカーにスクリーンを張り、出場者が上空の飛行船からプレイするというビッグイベントとなった。試合開始直前、あらしは一平太にひとつの賭けをもちかける。それは、あらしが勝てば一平太は二度と悪さをしないが、もし負ければあらしが飛行船から海上に飛び降りるという危険な代物だった。
各地区代表のプレイが次々と進み、残るは一平太とあらしのみとなった。一平太は豪快な手さばきで着々とスコアを上げていく。あらしは思わずつぶやく。「ううっ、口さきだけではない！おそるべき実力！」しかし突然の横風に飛行船が揺れ、一平太は制限時間五分のうち一分を残して砲台を失ってしまう。しかしそれでも彼の得点はそれまでの出場者をはるかに上回るものだった。
そしていよいよあらしの番。が、大会委員はあまりの風の強さに続行は危険と判断し、試合の中止を提案する。ゲームセンターに出入りできないあらしは、このチャンスを逃しては一平太との決着をつけることができない。必死で食い下がる彼に委員もしまいには折れるが、それを見た一平太はひとりほくそ笑む。「この風じゃ飛行船がゆれて高得点を出すのは無理ってもんだぜ〜っ！これでおまえは、東京湾のドザエモンよ〜〜〜っ！」
しかしあらしには秘策があった。プレイを開始するや突如コントロールパネル上に逆立ちしたのである。「マシンがいくらゆれようと、マシンと一体なら関係ないっ！」驚く一平太らをしり目に、着実にスコアを上げるあらし。それは毎日の訓練に裏打ちされた自信あってのものだった。ゲームに対する姿勢の差がここで出たのである。時間を二分残した時点で彼のスコアはすでに一平太とほとんど並んでいた。最後の一発、あらしはとっておきの技を披露する。マシン上に高くジャンプした彼は、空中で一回転してのビーム発射でUFOを撃墜した。必殺技・月面宙返りの誕生である。敗北にうなだれる一平太。あらしは最後に、観客へのちょっとしたサービスを実行する。それは残ったインベーダーの並びを、「アラシ」の形にするというものだった。夜空に光る自分の名を背に、あらしはこの瞬間インベーダーチャンピオンとなったのである。
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