初出：コロコロコミック1978年春の増刊号
収録：てんとう虫コミックス第1巻／小学館コロコロ文庫第1巻／太田出版復刻版第1巻
DX-TVでは人気テレビ番組「町のチャンピオン」の収録が今週も行われていた。最後に登場したのは「テレビゲームのチャンピオン」（ここでは、町一番の腕前程度の意味）こと石野あらしだ。見事な腕前でインベーダーをプレイし今週のチャンピオンに選ばれたあらしは、「テレビゲームで勝つこつは？」との質問に「カンと反射神経さ」と答える。
しかしその発言に異を唱え、観客席から飛び込んで来た少年がいた。かつてブロック崩しであらしと戦った大文字さとるである。ゲームは反射神経だけを競うものでないと主張するさとるは、それを証明するため自作のゲーム「ミラクルスペースインベーダー」であらしに挑戦する。それは一見普通のインベーダーだが、UFOが出現するやビーム砲の雨「ミラクル・シャワー」を降らせるというものだった。
予想もしなかった攻撃に敗れ、「反射神経がすべてならいまのミラクル・シャワーもかわせるはず」と言われてカッとなりさとるに飛びかかるあらし。が、ケーブルに足をとられ転倒したところへ友人たちが乱入し番組は滅茶苦茶になってしまう。事態を収拾しようと出てきたプロデューサーは、一週間後のグランドチャンピオン大会で決着をつける事を提案する。
決戦を前に、ミラクルシャワー攻略の策を練るあらし。ビーム砲ですべてのミサイルを受け止めるしかないと考えた彼は、今の倍以上の操作速度を身につけるため、ピアノでの特訓を開始する。一方テレビゲームを「マイコンに記憶されたプログラムをいかに読みとるかの勝負」と位置付けるさとるは、必勝を期して更に高度なプログラムであるパートIIを作成しつつあった。
一週間後、後楽園球場で大観衆が見守るなか二人の勝負が始まった。スコアボードに映し出されるゲーム画面。しかし、コントロールパネルを見たあらしは驚く。ビーム砲発射ボタンと砲台移動ボタンが普通のものとは左右逆についていたのだ。「きみの反射神経のさえを見せてもらおうと思ってね」というさとるに対し、あらしはピアノの特訓を生かし腕をクロスさせてのプレイで意地を見せる。そしてUFOが出現する。
ミラクルシャワーを待ち受けるあらしだったが、画面いっぱいに広がるビームの雨に為す術もなく一門目の砲台を失ってしまう。さとるが新しく作り上げたミラクルスペースインベーダーパートIIでは、逃げることすらかなわないのだ。あらしは残る二門のうち、一門を犠牲にしてシャワーの弾筋を見極めようと試みる。「できるものか！」「できる！」
三度目のミラクルシャワー。これを乗り越えられなければあらしの負けは決定だ。降り注ぐビームの雨を前に、あらしは叫ぶ。「いくぞ〜〜っ！！インベーダーコンチェルト第一番！！」目にも止まらぬ速さで動く指先から、血しぶきが飛んだ！そして観客は信じられない光景をまのあたりにする。凄まじいスピードで移動する砲台から発射されるビームが、無数のシャワーをすべて受け切ったのだ。続いて間髪を入れずジャンプするあらし。「必殺UFO落とし……。つるぎの舞いっ！！」難攻不落のUFOを、彼はついに撃ち落としたのである。
ミラクルシャワーが通用しない以上、あらしの勝ちは決まりだった。潔く負けを認めつつも再挑戦を誓うさとる。その険しい表情と、勝者であるあらしのすがすがしい表情が対照的であった。
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